男臭さがプンプンするバディーもの
「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ」のシーズン1を初めて見た時、最初の10分くらいは訳がわかりませんでした。
尋問を受けている男が何やら話しているのですが、物語冒頭なので視聴者にとっては全く要領を得ません。
当然、頭の中は「???」でいっぱいです。
でもほんの少しだけ我慢してください。徐々に面白くなっていきますから!
表面上は連続殺人事件を追う刑事ドラマなのに、いつの間にか人間の存在そのものについて深く考えさせられている。そんな体験ができる作品なのです。
なぜ日本でもっと話題にならないのか、本当に不思議です。
おそらく「哲学的すぎる」「重すぎる」と敬遠されがちなのかもしれません。でも、一度この世界に足を踏み入れると、その魅力から抜け出せなくなりますよ。
この「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ」はシーズン4までありますが、それぞれのシーズンは全く別々の物語です。
個人的にはシーズン1が出色なので、本記事ではこのシーズン1にフォーカスします。
ちなみに、シーズン3もかなり面白いのでおススメ!

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当ブログの管理人「ナカマチ」です。
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- 大の海外ドラマ好き。土日にまとめて10話くらい観てます
- Webのお仕事をしています
正反対の二人の刑事が織りなす心理劇

物語の中心にいるのは、ラスティン・”ラスト”・コールとマーティン・”マーティ”・ハートという二人の刑事です。
ラストは哲学者のような風貌を持つ、どこか影のある男。
過去に潜入捜査を経験し、その時の体験が彼の人生観を根底から変えてしまったようです。彼の口から出る言葉は時として詩的で、時として絶望的で、聞く者の心を深くかき乱します。
一方のマーティは平凡な家庭人です。妻と子供を愛し、週末にはバーベキューを楽しむような、ごく普通のアメリカ人男性に見えます。
しかし、この「普通さ」こそが曲者なのです。人間は誰もが表の顔と裏の顔を持っているものですが、マーティの場合、その落差が徐々に明らかになっていく過程が実に巧妙に描かれています。
そして配役はというと、どこか陰のあるラスト役がマシュー・マコノヒー、普通のアメリカ人に見えるマーティ役がウディ・ハレルソンです。
外見からすると配役が逆じゃないのかと思われがちですが、二人ともハマリ役です。このあたりの俳優の演技力も見どころの一つといえます。
複雑に絡み合う時間軸
このドラマで特筆すべきは、時間軸の使い方です。
1995年の事件当時と、2012年の現在が交互に描かれ、二人の刑事がどのように変化したのかが少しずつ明らかになっていきます。
17年後の二人の姿を先に見せることで、視聴者は「この二人の間に何が起こったのか」という謎を抱えながら物語を追うことになります。
この構成こそが、単なる犯人当てゲームとは異なる深さを生み出しています。
哲学的な深みと心理的リアリズム

ラストとマーティの会話は、このドラマの大きな特徴の一つです。
二人が車で移動中に交わす哲学的な議論は、時として事件の謎解きよりも興味深く感じられます。
ラストの語る人生観や宇宙観難解に思えるかもしれません。
しかし、彼の言葉には現代人が抱える孤独感や絶望感が鋭く表現されており、 聞いているうちに不思議と心に響いてきます。
一方、マーティの現実的で保守的な価値観との対立が見どころの一つです。
リアルすぎる人間描写
このドラマで最も印象的なのは、登場人物たちがあまりにもリアルに描かれていることです。
ラストもマーティも完璧なヒーローではありません。彼らにはそれぞれ欠点があり、間違いを犯し、後悔を抱えて生きています。
特に、家族関係の描写は見事です。
マーティの家庭生活の描写は、現代アメリカの中流家庭が抱える問題を鋭く浮き彫りにしています。表面的には幸せそうに見える家族の中に潜む不安や不満、そしてコミュニケーションの欠如。
これらの問題が、事件の捜査と並行して丁寧に描かれています。
映像美への圧倒的なこだわり

このドラマの視覚的な魅力も魅力の一つです。
ルイジアナ州の湿地帯、工業地帯、そして小さな町々の風景が、まるで絵画のような美しさで描かれています。
特に印象的なのは、工場の煙突から立ち上る煙と夕日が重なるシーンや、霧に包まれた湿地帯の不気味な美しさです。
これらの映像は単なる背景ではなく、登場人物たちの心境を象徴的に表現する重要な役割を果たしています。
音楽と効果音の絶妙なバランス
音響面でも、このドラマは他の作品と一線を画しています。
静寂の中に響く虫の鳴き声、風の音、そして時折挿入される音楽が、独特の緊張感と美しさを生み出しています。
音楽は決して主張しすぎることなく、物語の流れを自然に支えています。
特に、二人の刑事が直線道路を車で走るシーンは非常に印象的です。
予測不能な展開と深い人間洞察

このドラマの脚本の巧妙さには何度も驚かされました。
視聴者が一つの謎を理解したと思うと、それがより大きな謎の一部に過ぎないことが明らかになります。
そして、事件の真相に近づくにつれて、二人の刑事の関係性にも微妙な変化が生じていくのです。
私は何度も「まさか、そういう展開になるとは」とうなってしまいました。
しかし、振り返ってみると、すべての展開が論理的で必然的だったことに気づかされます。
心理的な緊張感の持続
8話という限られた話数の中で、これほどまでに濃密なドラマを展開できるのは驚異的です。
各話ごとに新たな発見があり、登場人物たちの新たな一面が明らかになっていきます。
特に、ラストとマーティの関係性の変化は見事です。
最初は互いに距離を置いていた二人が、事件を通じて深い絆を築いていく過程と、同時にその絆が試される瞬間の描写は、人間関係の複雑さを見事に表現しています。
と言ってもありきたりなものではなく、「そうりゃそうなるよね」といった納得のストーリ展開です。
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「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ シーズン3」
老刑事ウェイン・ヘイズの半生と、事件の真相を追う姿が三つの異なる時間軸(1980年、1990年、2015年)で描かれています。記憶の断片と過去の過ちに苦しむヘイズは、事件の闇と自身の人生が複雑に絡み合う中で、真実へと迫っていくのです。失踪事件の解決と、それがもたらすヘイズの人生への影響、そして長年にわたる捜査の末に驚きの真相が明らかに。
「トップ・オブ・ザ・レイク」
ジェーン・カンピオン監督によるこの作品は、ニュージーランドの美しくも孤独な風景の中で展開される心理サスペンスです。行方不明になった少女を追う女性刑事の物語ですが、事件の背後に隠された地域社会の闇と、主人公自身の心の傷が交錯する構成は、「トゥルー・ディテクティブ」の複層的な語り口と通じるものがあります。
「ザ・キリング」
デンマーク発のこの傑作クライムドラマは、一つの殺人事件を20話かけて丁寧に描いた作品です。「トゥルー・ディテクティブ」とは対照的にゆっくりとしたペースで進む物語ですが、登場人物たちの心理描写の深さと、事件が関係者に与える影響の描写は同じく秀逸です。特に、主人公の女性刑事サラ・ルンドの人物造形は、ラスト・コールと同じく複雑で魅力的です。
まとめ:武骨・骨太なトゥルー・ディテクティブのネタバレなし紹介

「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ」のシーズン1は、単なる刑事ドラマの枠を大きく超えた、現代テレビドラマの傑作です。
その人気ぶりは一時、サーバーをダウンさせたほど。それほどまでに全米が熱狂したのもうなずけます。
8話という短い話数の中に、これほど濃密な人間ドラマと哲学的な思索を詰め込んだ作品は他にないかもしれません。
このドラマを見終わった後はきっと、彼らの選択は正しかったのか考えてしまうことでしょう。
武骨で骨太でガツンとした物語を楽しみたければ、「トゥルー・ディテクティブ」はピッタリの作品です!
また次回も、皆さんがまだ知らない素晴らしい作品との出会いをお届けできるよう、路地裏の探索を続けてまいります。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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